たかがツイード、されどツイード。ツイード糸を求めてはからずも放浪の旅をしてしまいました。
(ツイード地の洋服、大好きなのに、今までツイードヤーンを編んだことがなかったという衝撃の事実)
ツイードヤーンの定番って、何でしょうか。
国内メーカーの糸だったら、もう廃盤になってしまいましたがハマナカの「ツイードバザール」がまず思い浮かびます。
あとは…オリムパスの「エバーツイード」とか、同じハマナカだと「ソノモノツイード」。
パピーの「ソフトドネガル」と「ボットナート」。思いつくのはこれくらい。
海外メーカーだと、今をときめくBrooklyn Tweedの「Shelter」と「Loft」をまず筆頭に、あとはRowanの「Felted Tweed」と…
あとが続きません。そもそもツイードヤーンを編んだ経験がない私には難問。
杢糸ならたくさんあります。でも探しているのはネップが入っているツイード糸です。
例えばモヘアやシルクやカシミアやアンゴラ糸は各社取り揃えて用意していますけど、ツイード糸って、意外なほどない!なかった!
ブークレやループやファーと同じように、ファンシーヤーン的位置付けなのでしょうか。
そんな中、BTは本当に隙き間を埋めてきたなぁと感服しています。
「Shelter」より太いツイードヤーンはあっても、この太さはなかなか見つけられません。
「Loft」は50gで275yardの中細。中細のツイードヤーンなんてニッチな糸、現行だと他にあるんでしょうか。
特筆すべきは、「Shelter」と「Loft」は、適合針の号数が異様に広くて、一応公式サイトだと「Shelter」はUS 7〜9号(4.5〜5.5mm)、「Loft」はUS 0〜4号(2〜3.5mm)とありますが、正直raverlyのパターンや作品群を見ていると、「あってないようなもの」です。
実際、日本橋の「Keito」さんには、JP 6号針で編まれた「Loft」のプルがサンプルとして展示されていましたが、その編み地は別にスカスカじゃないのです。
私が以前編んだ「Breckon」(プロジェクトページ)というカーディガンは指定糸が「Loft」ですが、代用するなら合太糸がお勧めされていて、私も40g120mの合太糸で編みました。
同様なことは「Shelter」でも言えて、50gで128mと聞くと、私の感覚では並太です。
でも、4mm程度の細さ(US 5.5〜6号)でも普通に編まれている印象。
こんな感じで「Shelter」も「Loft」も太いんだか細いんだか、標準ゲージがありません。
使う号数と手加減によって、ハイゲージでもローゲージでも編めますので、お好みでどうぞっていう糸。
ただでさえ種類の少ないツイードヤーンの中で、パターンに合った代用糸を見つけるのは至難の技だなというのが、結論。
「BT」のカタログの作品を気に入ったら、とりあえず「Shelter」か「Loft」で編むのが失敗なさそう。
今回私は「Bray」をどうしても「Shelter」以外の糸で編みたくて(理由は以前ブログでも書いた記憶がありますが、「Shelter」の編み地サンプルを触ってみたら、なんと、あまり好みの質感ではなかったのです。もちろん、糸の良し悪しではなく、個人の嗜好の話です)探して廻り、なかなか良さげな糸を見つけました。
Swans Islandの「All American Collection Worsted」。
今秋、新発売された糸のようです。
渋めの色揃えも、素朴な糸の質感も、画像からその魅力があふれんばかりに伝わってきて、この糸で編む「Bray」が完璧に想像できたので、取り寄せてみることにしました。
色は「Pomegranate」。深みのある、大好きな赤です。
はい、とうにツイードヤーンで代用糸を見つけるのは諦めました。
1色を決め打ちできる訳も無く、もう1色。(できればもう3色くらい欲しかったです^^;)
濃いターコイズブルーの「Atlantic」。
ああもうこの色で編むアランはさぞかし素敵だろうと、想像するだけで鼻血です。
ちなみに公式サイトで注文しました。送料がバカ高かったですが、事前の住所確認もあり、丁寧に段ボール梱包され、表の伝票には「120ドル」と書いてくれて(※大嘘です)関税回避も万全な体制でした。
でだ。
「Bray」の指定ゲージは、US 8号(=JP 10号)でメリヤス編み「18目27段」、模様編み部分「22目27段」です。
この「All American Collection」は80gで210yardなのですが、「Shelter」が50gで140yardなので、計算上は大体同じ太さです。
標準ゲージはUS 7号使用で17目なので、まぁこれも許容範囲かと思っていたのですが、スワッチを編んでみたら、前回NGだった「Rowan Felted Tweed Aran」ほどかけ離れてはいませんが、どうにも代用糸としては太かった…orz
認識がやっぱり私は相当甘いようです。
1目2目の違いでも、身幅となればそれは相当な長さになってくるわけですしね…。
というか、「Shelter」さん、あんたいったいどんな糸なのよ??
その糸長で、私の記憶ではかなり太い見た目だったのに、謎は深まる一方。
「もしかしたら、指定糸でもこのゲージは私は出せないんでは…?」という疑問が湧き起こり、
敵を知れば百戦危うからず、でしたっけ?(←かなり適当なので怒らないでください)
実際に編んでみないとこれは代用糸なんて見つけられないわと半ば業を煮やし、会社帰り「Keito」さんに行き、一匹捕獲してきました。
案の定、JP 10号では「Shelter」でも指定ゲージが出せませんでした。
両方ともJP 8号で編み、「Shelter」の方は22目27段、「All American Collection」だと22目24段で、ブロッキング後のサイズは縦横10.5cmになりました。
「Shelter」を使うなら8号で編めば問題なさそう。
でもしかし、この赤で編む「Bray」、欲しかったな…。
「All American Collection」も、針の号数を下げれば調整可能だと思いますが、この糸をこれ以上細い針で編むのは嫌です。
編む手が完全に拒否しています。毛糸には編みたい号数がおのずと存在するんです!
編み心地に関してですが、どちらもかなりよろしくないです。
特に「Shelter」はボソボソ、もそもそしていてネップ(&巨大なおがくず)が引っかかる引っかかる、「All American Collection」も結構凹凸があるのでするするとはいきません。これまでは編みやすい糸ばかり編んでいたので、編む手が悲鳴を上げています。
実はどちらのスワッチも、いったん編み上げて水通しをしたあと、模様編みの交差の間違いに気づいて編み直しているんですが、水で洗ったあとだと、幾分編みやすくなりました。
本番で編むときも、カセの状態でいったん水に通したほうが、獣脂が落ちて柔らかくなって良さげ。
「Shelter」の、ゲージの激しい振り幅も、なんとなく納得しました。太いんだけど、空気を含む太さなのですね。
撚りが強くみっしりどっしりしている「All American Collection」はいかにも伝統的なアラン糸ですが、
「Shelter」はふわふわもわもわ、ぼそぼそしてるけど弾力もあり、と本当に不思議な質感です。
さて、もうどうしたらいいのやら、でも、立ち止まっていては楽しみにしている「Bray KAL」が始まってしまいます!
こうやって試行錯誤しているとゲージ的にはNGでも他のパターンでいくらでも活用できそうな素敵糸がボンボコ溜まっていくので、結果オーライですがいい加減決めたいです(泣)
いまちょうどタイミングよく、「Webs」さんが送料サービス中&これならもう完璧に間違いないだろう(ほんとか?)という定番糸で、「Bray」を編んでみたい!という色があったので、3度目?4度目?の正直で注文してみようと思います。
果たして果たして。
長くなりましたが、最後に覚え書き。
2月以来、久しぶりに訪問した「Keito」さんでしたが、前回は「Shelter」だけだったところ、「Loft」も取扱いを始めていて、実物が拝めたのはありがたかったです。「Loft」は質感も編み地も大変好ましい糸でした。これはぜひとも本家に注文しなくちゃ!です。
それから「Madelinetosh」の「Tosh Merino Light」と「ユニコーンテイル(少量カセ)」の限られた色だけでしたが、コーナーができてました。
これも実物を見たことがない色が拝めて貴重でした。